食生活と身体の退化
Life in all its Fullness is Mother Nature Obeyed.
母なる自然に添う時、生命は完全な花を咲かせる
ウェストン A. プライス自給食の重要性、そして文明食、加工食品による身体の退化と崩壊を如実に見せてくれる珠玉の作品
W.A.Price
およそ10年間、プライスは妻とともに健康の秘訣を求め世界中を訪ね歩きました。調査対象として選んだのは、病気に苦しむ人びとではなく、健康な人びとでした。
その驚異的な健康がいかにして獲得され、いかにして崩壊していくのかを明らかにしていく。口腔衛生学会幹事長・日本大学教授 木所正直
本書の内容は、現代の栄養化学書の類ではなく、プライス博士が十数年にわたり自らの足で調査した貴重な研究業績を基礎とし、追試研究結果の総合集大成であり、貴重な資料として教えられるものである。ぜひ熟読されることを心からお奨めしたい。
国立民族学博物館館長 梅棹忠夫
プライス博士の研究は、歯学の領域における業績であるとともに、人類学の領域における研究としても、きわめて興味あるものであり、今日においても十分に刺戟的な古典的名著である。
有害食品研究会会長・元大阪大学教授 丸山 博
私たちが桜沢如一先生から教示を受けた問題が、このプライス博士の本で、余すところなく解明されていることーー文明化された食習慣が人間の生命体に自然破壊を進行させつつあることーーを、改めて詳細に読み取ることができた。
国立公衆衛生院部長 橋本正己
この本は、この領域では類のない人類学的手法による研究成果であり、諸民族の近代文明との接触による食生活の変化が、その歯列、う蝕、顎などに与えた恐るべき影響が見事に実証されている。
東京大学人類学教授 埴原和郎
この本は、歯の健康とぶんんかとの関係を、豊富なデータによって明らかにしたという点も立派と思いますが、私どもの目からみますと、1930年前後の諸民族の生活が詳しく述べられており、今では復元不可能な伝統的生活様式の記述という点でも、貴重な民族誌となっており、その意味で得難い資料を提供してくれております。
(肩書きは本書初版当時のものです)
訳者(片山恒夫)あとがきより
食事が適性でない ーいくら高価な贅沢食であったとしても、それは必ずしも栄養的にバランスのとれた正しい食事ではないー 場合に、身体にどのような悪影響を与えるか、特に口腔疾患についての深いかかわり方を一人一人に話し、納得のうえ食習慣を見直してもらうことは至難のことである。だから権威のある図書によって理解してもらおうとしても、学術的な裏づけのある、しかも興味ある物語的な読み物がほとんど皆無であった。
このプライス博士の図書の意義は、まさにその点についても訳者の念願するところが十全に生かされているものと思われた。
・・・
医療に関係する人はもちろん、すべての治療を必要とする人達に、あるいは子育ての最中の親達だけではなく、余生を送る老齢の人達にも読んでもらい、写真と解説だけを見てもらうだけでも、食習慣改善への比類のないモチベーションとなり、実際活動に踏みこんでもらうことができると考えた。なお、恒志会会報「地べたからの思い」Vol.4 (平成21年度)に、
栄養指導を柱とした歯科治療 ーWeston A. Price著「Nutrition and Physical Degeneration」を訳してー
と題しての片山恒夫のインタヴュー記事が掲載されています。
内容的には『歯界展望』第53巻第1別冊 昭和54年1月15日より転載したものです。この本の読み方
老婆心ながら・・・
1930年代前後の世界の諸民族の伝統的生活様式ー即ち民族史あるいは人類学に強い関心のある方は、第1章からじっくり熟読していただき、楽しんでいただきたいと思います。
仕事で忙しい方や、ゆっくり時間のとれない方は、まず後半の第26章から第29章まで読んでいただき、それから時間のとれる時に、第1章に戻って少しづつ読み進めていただいた方が効率的かも知れません。
全然読む時間をとれないと嘆いておられる方は、写真と解説だけでもご覧下さい。驚くこと必至です。
Weston A. Price 「Nutrition and Physical Degeneration」原著入手のエピソード
私は、プライスの原著があることは分かったが、どうすれば入手できるのか、どこにあるのか、国内にはあるのか、まったく調べようがなかった。
患者の中から『調べてあげよう』という人が現れた。
その人は、元NHK外信部の鈴木博信氏で、まず国会図書館に行ってくれた。
しかし残念ながら、国会図書館には存在しなかった。ただ図書館職員が、国内の医学書はすべて慶応大学医学部図書館に登録してあると助言を与えてくれた。
そして、慶応大学の登録資料から、九州大学医学部図書館に、一冊のプライス原著が存在することが分かった。鈴木氏が九大から一週間だけ借り出してくれた原著から、総てが始まったのである。
写真 「食生活と身体の退化」から、ほんの一部の写真です
ぜひご覧ください!
ポリネシア人
ー孤立集団と近代化集団ー
上の写真は伝統的な生活をしているサモア人。
下の写真は近代食の生活をしているサモア人。
歯列弓の違いに着目。顔の骨格が未発達なため歯列弓が狭く小さく、
歯もはみ出している(叢生)状態である。
これは両親の栄養摂取が適切でなかったことの結果として現れた。スイス
海抜1600mほどの美しいローチェンター峡谷。
およそ2000人のスイス人がここに住んでいる。
1932年の時点では、
この谷の歴史の中で結核で死んだ人は1人もいなかった。何百年もの間、
ここの人たちはこのような手回しの石臼でライ麦を挽いていた。
右の写真は全粒のライ麦パンを焼く共同釜である。両親も子供も適切な食物をとっている場合。
顔や歯列弓の形状はこのように正常である。
よく発達した鼻孔にも注目してほしい。スイスの中でも近代化の進んだ地域では虫歯は驚くほど進む。
左上の少女は16歳で、右の子はそれより年下である。
2人は精白パンと甘い物をたっぷり食べている。
下の2人は歯がぎゅう詰めではみ出した(叢生)状態にあって歯列弓の形がひどく悪い。
この歯列不正は遺伝によるものではない。アラスカ先住民
典型的なアラスカ・イヌイット先住民。
顔と歯列弓の幅が広いこと。
ムシ歯のないことに注目してほしい。
左上の婦人は下の歯が1本折れている。
彼女には26人の子供がいるが、子供たちにもムシ歯が1本もなかった。アラスカ・イヌイットが白人の食物を口にするとムシ歯が進行する。
ひどい歯周病になることも多い。
多くの地方では歯の治療を受けることができないので、
痛みも強く、長引く。歯列弓の異常や叢生は未開イヌイットの集団からは実際にはそれ程多く発見されていないが、両親が白人の食物を食べ始めた後で生まれた子供の代になると、こうした症状が頻繁に見られる。
子供たちの狭くなった鼻孔や変形した顔に注目してほしい。
これは、親指をしゃぶったせいではない。オーストラリア先住民
ー孤立集団ー
ここの先住民が住んでいる土地の大部分は一年中日照りが続く危険にさらされているが、大自然の法則に服して生きていくための技術を心得ている。素晴らしい歯列弓と歯をみてほしい。
ムシ歯はほとんど見られなかった。ー近代化集団ー
人種や皮膚の色にかかわらず、先住民が栄養欠陥食を食べ始めると、生まれてくる世代には、一般に共通した顔と歯列弓の歪みや骨の異常が見られる。
近代文明に接触したオーストラリア先住民の子供たちに狭い歯列弓や叢生が見られることと、彼らの顔が近代的な白人の顔立ちに似ていることに注目してほしい。
ニュージーランド
ニュージーランド先住民、マオリ族は世界中の種族のなかでも最高の歯と身体を持っていた。
彼らが白人の文明の影響下におかれる以前は、虫歯の罹患率はなんと1000本に1本というものだった。ニュージーランドに白人が移住してくるにつれて虫歯が蔓延し出した。
虫歯や歯の膿瘍は、マオリ族のなかでも近代化が一番進んだ地域に多い。北アメリカ先住民
ー孤立集団ー白人の文明に接するにはあまりにも遠く隠れた南フロリダに今もなお住んでいるセミノール族は、典型的ともいえる素晴らしい歯と歯列弓を持っている。
彼らは、エバーグレードの森に住み、現在もその土地で採れる食べ物を食べている。ー近代化集団ー
しかし、近代文明とその食品に接して生活しているフロリダのセミノール族は、広範で重度のムシ歯にかかっている。
ー近代化集団ー
これもセミナール族である。
この近代化した集団の子供たちの顔や歯列弓が変形していることに注意してほしい。
鼻孔の狭まった顔面骨と、叢生を伴った歯列弓は著しく未発達である。
彼らの顔は、多くの自分たちにも共通しているため当然だと思いがちな、あのムシ歯に踏み荒らされている。W.A.プライス博士の教材写真
博士が講演で用いた写真集の一部です。写真のコメントは博士自身が書いたものです。
ポリネシア
見事な人体形成の典型例。
この女性は90歳近い。見事な歯、そして顔や体のつくりが素晴らしい。
自然が適切な栄養によって形成する人体の例。
インド
顔や体のつくりが見事な22歳の男性。
彼もまた地元の自然の作品。マレーシア人
よく形成された身体。
優秀な真珠採りのダイバー。彼らの作るボートの出来がよく操作も巧み。
食物は島の植物性のものと熱帯に住む貝類や鱗のある魚。アフリカ
この娘は部族特有の歯列弓と顔の骨格をもつアフリカ美人。アフリカ
この少女は地元で採れる食べ物を選ぶ部族の賢さの産物。
均整のとれたアフリカ未開地の子供。
部族の知恵が優れていることを示している。ペルー
左上 13才の男児で世にも稀に見る聡明な子。
きれいな顔立ちと広い鼻孔、そしてきれいな歯列弓。右上 見事に形成された歯列を見せる女の子。
下 若者達の歯列弓と顔は、大変良く発達、形成されている。
「北米先住民の福音」 E.T.シートン
白人の文明や文化は本質的に物質中心主義的なものであって、
ここでの成功の尺度は、「私は自分のためにどれほど多くの財産を手に入れたか」ということである。それに反して北米先住民の文化は、精神的なものが基本になっている。
そこでの成功の尺度は「私は同じ種族の人間にどれほど役に立ち尽くすことができたか」にある。
詩 エリザベス・オーデル
大地の丘に広がる平原に 私は横たわり、地面に耳を押しつけ、
大地になかで遠く深く脈打つ心臓の律動的な音に耳を澄ます。
するとそれに合わせて私のなかの速くて聞きなれた心臓も脈打つ。
2つの音はまるで1つの音のようにともに強まりともに弱まる。
大地の音と私のそれは区別できない、私は律動的な宇宙の心臓の一部なのだから。